Shard.00:あらすじ
『サイバーパンク2077』(2020年)
野望と転落
物語の舞台は、巨大企業が支配するサイバーパンク都市「ナイトシティ」。成り上がりを夢見る傭兵Vは、相棒のジャッキーと共に大物フィクサーのデクスターから生涯最大の依頼を受ける。それは、世界最大の企業アラサカ社が開発した極秘生体チップ「Relic(レリック)」を、同社の御曹司ヨリノブが滞在する高級ホテルから盗み出すというものだった。
しかし潜入中、ヨリノブが実父である最高権力者サブロウ・アラサカを暗殺する現場に遭遇。厳戒態勢からの脱出劇の最中、チップのケースが破損してしまう。劣化を防ぐためVはチップを自身の頭部ソケットに挿入するが、ジャッキーは致命傷を負って息絶える。さらに帰還したVを待っていたのは、アラサカの報復を恐れたデクスターの裏切りだった。頭部を撃たれたVはゴミ捨て場に棄てられ、一度目の「死」を迎える。
侵食と共生
死んだはずのVは奇跡的に蘇生する。彼を救ったのは、他ならぬRelicだった。Relicは保存された人間の意識(コンストラクト)を宿主の脳に書き換え、新たな肉体として復活させる特殊チップだったのだ。保存されていた意識は、2023年にアラサカ・タワーを核爆破した伝説のテロリスト「ジョニー・シルヴァーハンド」。
RelicはVの脳を修復すると同時に、ジョニーの意識を定着させるプロセスを開始していた。Vの脳内にはジョニーの幻影が現れ、身体を共有することになる。だがRelicのプログラムにより、Vの人格は徐々にジョニーのものへと上書きされ、数週間で「V」という存在が完全消滅することが宣告される。Vは確実な死を回避すべく、頭の中の同居人ジョニーと対立しながらも共犯関係を結び、Relic除去の手段を求めてナイトシティを奔走する。
生存への模索と多様なる終末
Vの探索は3つの道へと分岐する。ハッカー集団「ヴードゥー・ボーイズ」を介して旧ネットの防壁「ブラックウォール」の向こうに潜むAIオルト・カニンガムへ接触する道。Relic開発者ヘルマンを捕獲するため、ノーマッド(放浪民)のパナムと協力する道。そしてサブロウの元側近タケムラと共にアラサカの内部抗争へ介入し、娘のハナコに接近する道である。
いかなる手段を用いても完全な治療には至らず、タイムリミットを迎えたVは、ジョニーと共にアラサカの意識データバンク「神輿(みこし)」へ物理アクセスする決戦へと挑む。
結末はプレイヤーの選択によって分岐する。企業に頼り魂をアラサカに売る「悪魔」、パナムたちノーマッドと家族の絆を結び荒野へ旅立つ「星」、ジョニーに身体を託して伝説の傭兵となり宇宙へ向かう「太陽」、Vが己の死を受け入れジョニーに肉体を譲る「節制」、誰も巻き込まず自ら命を絶つ「自殺」。歪んだ格差社会の中で、自らの人間性と選択の重みを突きつける多様な終末が描かれる。
DLC『仮初めの自由(Phantom Liberty)』(2023年)
墜落と密約
本編中盤、Relicの侵食に苦しむVのもとに「ソングバード(ソミ)」と名乗る謎のネットランナーから通信が入る。彼女はNUSA(新アメリカ合衆国)のマイヤーズ大統領の右腕であり、Vの頭部にあるRelicを治す手段の提供と引き換えに、危険地帯での大統領救出を要求する。マイヤーズの乗る大統領機がハッキングされ、ナイトシティの最も危険な隔離地区「ドッグタウン」に墜落しようとしていたのだ。
軍人カート・ハンセンが私兵組織を率いて支配するドッグタウンへ潜入したVは、激闘の末に大統領の救出に成功する。しかしナビゲートしていたソングバードは消息を絶ってしまう。大統領を安全圏へ逃がし、自身の治療法を確保するため、Vはナイトシティに長年潜伏していたFIA(国家情報機関)のスリーパーエージェント、ソロモン・リードと合流し、隠密作戦を開始する。
忠誠と搾取
ハンセンの牙城へ潜入し調査を進めるVは、事件の背後にある国家の闇を知る。ソングバードは捕らわれたのではなく、自らの意志で大統領を裏切り、墜落事故を仕組んでいた。マイヤーズ大統領は国際条約で禁止された旧ネットの絶対防壁「ブラックウォール」の突破にソングバードを酷使しており、彼女の神経系は崩壊寸前だったのだ。彼女は国家の支配から逃れ、生き残るために陰謀を企てていた。
脳を侵食されるVと、ブラックウォールに自我を蝕まれるソングバード。二人は巨大なシステム(企業と国家)に搾取され、頭の中の時限爆弾に脅かされる完全な「相似形」の存在であった。
究極の選択と新たなる結末
二人は旧時代の遺物「ニューラルマトリックス」を入手して侵食を治そうとするが、それは「Vかソングバードのどちらか一人しか救えない」という残酷な仕様だった。国家への「忠誠」に縛られるリードに与するのか、あらゆる者を騙してでも「自由」と生き残りを渇望するソングバードに与するのか、Vは究極の決断を迫られる。
ソングバードに協力した場合、Vは彼女に騙されていた事実(治療薬が1人分であること)を知りつつも彼女を月へと送り出すか、土壇場でリードに引き渡すかを選ぶ。リードに協力した場合、暴走し廃人となった彼女の「死にたい」という願望を叶えるか、生きたまま国家へ引き渡すかを選ぶことになる。
もしVが「NUSAによる治療」を選択した場合、本編に新たな結末「塔」が追加される。最新医療によりRelicの除去に成功し、Vは「生存」を勝ち取る。しかし目覚めたのは2年後であり、代償として戦闘用サイバーウェアを一切装備できない身体になっていた。かつての仲間や恋人は去り、路地裏のチンピラにすら殴り倒される「ただの一般人」となったVは、伝説となる夢を失い、群衆の雑踏の中へと静かに消えていく。
肉体と実存の系譜学:『サイバーパンク2077』の電脳と魂を解読する15の思索
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