Chapter.00:あらすじ
『DEATH STRANDING』(2019年)
本作は、「デス・ストランディング」と呼ばれる未曾有の大災害によって物理的・精神的に分断された北米大陸を舞台とする。生者の世界と死者の世界(ビーチ)が交わり、触れたものの時間を奪う雨「時雨(タイムフォール)」が降り注ぐ中、目に見えない死者の魂「BT」が世界を徘徊している。生者がBTに捕食されると「対消滅(ヴォイドアウト)」という大爆発が引き起こされるため、人々は地下シェルターへの孤立を余儀なくされ、国家としてのインフラは完全に機能不全に陥っていた。
主人公サム・ポーター・ブリッジズは、死境(結び目=シーム)から肉体へと帰還できる「帰還者」の特異体質を持つ伝説の配達人である。彼は、育ての母でありアメリカ再建を掲げるブリッジズの大統領ブリジットの死を看取る。その後、次期大統領となるべき義姉アメリが西海岸のテロリストに囚われていることを知り、彼女の救出と、分断された都市群を「カイラル通信」で繋ぎ直すという過酷な任務を引き受ける。道中、サムはBTを感知するための特殊な赤ん坊「BB(ブリッジ・ベイビー)」の「ルー」と行動を共にし、単なる道具として扱われるBBに対し、次第に親と子のような強い感情的な絆を育んでいく。
旅の過程で、サムはフラジャイルやデッドマンら仲間の支援を受けながら、分離過激派のヒッグスや、戦場を彷徨う謎の男クリフと対峙する。やがて明らかになるのは、クリフがサムの実の父親であったという凄惨な過去である。かつてBBの第一号実験体にされていたサムを奪還しようとしたクリフは殺害され、その際に命を落とした赤子のサムをアメリ(=ブリジットの魂)がビーチで蘇生させたことで、彼は「帰還者」となっていたのである。生と死の境界を乱したこの行為こそが、デス・ストランディング現象を決定づけた要因の一つであった。
物語の核心において、アメリの正体が地球上の全生命を絶滅に導く高次元の存在「絶滅体(エクティンクション・エンティティ)」であることが判明する。彼女は自らの宿命に苦悩しつつも、苦痛に満ちた生を終わらせるべく、不可避の絶滅(ラスト・ストランディング)を早めようとしていた。しかしサムは、彼女を銃で撃ち拒絶するのではなく、武器を捨てて「抱擁」することで、アメリに絶滅の先送りを決意させる。世界との繋がりを絶ち、自らのビーチに永遠の孤独として留まる道を選んだアメリを見送ったサムは、役割を終えて焼却処分されそうになったルーを命懸けで救い出し、UCA(アメリカ都市連合)の象徴たる手錠型端末を外して離脱する。他者との繋がりを恐れ、接触恐怖症を抱えていた男が、一人の小さな命との繋がりを自らの意志で選択し、陽の光が差し込む雨上がりの世界へと歩み出す。本作は「孤立からの再接続」を主題とし、国家というマクロな繋がりから、個と個のミクロな愛情へと帰着する鮮やかな構造を提示している。
『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(2025年)
前作の結末から数年後、UCAを離脱したサムは、元アメリカ・メキシコ国境付近の荒野で成長したルーとともに平穏な隠遁生活を送っていた。しかし、民間ネットワーク組織「Drawbridge(跳ね橋)」を率いるフラジャイルが現れ、UCAの枠組みを超えてメキシコ方面等の別大陸をカイラル通信で接続する任務をサムに依頼する。その矢先、彼らの隠れ家を謎の武装集団が襲撃する。この凄惨な襲撃によってフラジャイルは致命傷を負い、サムの希望であったルーは命を落としたかのように描写され、サムは再び深い喪失と絶望の淵に突き落とされる。
サムはルーを失ったというトラウマを抱えながらも、自死すら許されない「帰還者」としての呪いと向き合うため、移動拠点「DHVマゼラン」に乗り込む。ドールマンやレイニーといった新たな仲間たち、そして謎の女性「トゥモロウ」とともに、彼は再び世界を繋ぐ旅へ出る。各地域を通信で繋ぐことで「プレート・ゲート」と呼ばれる巨大な空間転移ポータルが開き、オーストラリアなど多大陸への接続が可能となる中、人類をビーチへ幽閉し絶滅から逃れようとする組織APAS、そしてかつてサムが打倒し復活を遂げたヒッグスと再び対峙することになる。
物語の終盤、サムのアイデンティティと世界の根幹を揺るがす衝撃的な真実が次々と明かされる。襲撃事件の裏で暗躍していたのは、世界を完全に終わらせる「ラスト・ストランディング」を目論むヒッグスであった。さらに、死んだと思われていたルーは生きており、亡きニール・ヴァナのビーチへと転送されていたことが判明する。ルーは時間の流れが異なるビーチの蛹のなかで急速に成長し、共に旅をしていた大人の女性「トゥモロウ」その人となっていたのである。さらに重要な事実として、ルーは単なるBBの実験体ではなく、かつて対消滅で死んだと思われていたサムの亡き妻ルーシーとサムの間に実際に授かった実の娘(BB-00)であったことが明かされる。
最終決戦において、サムはビーチでヒッグスを打ち倒し、ラスト・ストランディングを阻止する。これによって大人になったルー(トゥモロウ)を真の意味で救い出すが、同時に、序盤の襲撃で既に肉体的な命を落とし、魂のみで現世に留まっていたフラジャイルとの別れが訪れる。前作が「分断からの接続」を空間的に描いたのに対し、本作は「大切な者の死と喪失」という時間的・精神的な受容を主題としている。時雨がおさまり自然の緑が芽吹く中、トゥモロウがフラジャイルの意志と装備を引き継ぎ、サムが自らの過去(喪失)と未来(娘)のすべてを受容したことを示唆して、物語は静かな終結を迎える。
接続と絶滅の現象学:『デス・ストランディング』の哲学・神話・深層を解読する15の思索
書籍版がリリースされました。Kindle Unlimited会員の方は0円でお読みいただけます。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。当アーカイブの活動を維持するために、コーヒー1杯の温かいご支援をいただけると大変励みになります。