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Nexus.00:『ブレードランナー』2作品のあらすじ

本書の考察へと足を踏み入れる前に、三十年にわたる『ブレードランナー』の壮大な物語を振り返る。作品の細部を忘れてしまった読者も「記憶のアンカー」として、このあらすじを活用していただきたい。(ネタバレあり)

『ブレードランナー』 (1982年/舞台設定:2019年)

舞台は2019年。環境破壊によって酸性雨が永遠に降り注ぎ、スモッグに覆われたロサンゼルス。そこは、強大な権力を持つタイレル社が製造した人造人間「レプリカント」が、人間社会の影で使役されているディストピアである。彼らは過酷な宇宙開拓地(オフワールド)での奴隷労働や戦闘、慰み者として設計され、人間をはるかに凌駕する身体能力と知能を持っていた。しかし、経験を積むことで感情が芽生え、人間に反逆することを防ぐため、彼らには「4年の寿命」という絶対的な制限(フェイルセーフ)が組み込まれていた。

ある日、最高傑作である「ネクサス6型」のロイ・バッティ、プリス、ゾーラ、リオンの4名がオフワールドで反乱を起こし、地球へと逃亡する。彼らの目的は、自らの寿命を延ばす方法を創造主から聞き出すことであった。彼らを識別し「解任(処刑)」するため、ロサンゼルス市警は引退していた専任捜査官「ブレードランナー」のリック・デッカードを呼び戻す。

捜査の過程でタイレル社を訪れたデッカードは、社長の姪の記憶を移植され、自分を本物の人間だと信じ込んでいる最新型(ネクサス7型)のレイチェルと出会う。デッカードは「フォークト=カンプフ法」を用いて彼女がレプリカントであることを見抜くが、彼女が自らの偽の記憶を知り絶望して流した涙を前に、次第に彼女へ惹かれていく。

デッカードは酸性雨の街で逃走するゾーラを射殺し、激高したリオンに殺されかけるが、間一髪のところでレイチェルに命を救われる。一方、レプリカントのリーダーであるロイ・バッティは、遺伝子デザイナーのJ.F.セバスチャンを利用し、ついに創造主エルドン・タイレルとの対面を果たす。迫り来る死の恐怖に抗い「もっと命が欲しい」と迫るロイに対し、タイレルは寿命の延長が物理的に不可能であることを告げる。絶望と怒りに駆られたロイは、タイレルの両眼を潰して惨殺する。

物語の結末、デッカードはセバスチャンのアパートでプリスを仕留めるが、直後に現れたロイによって屋上へと追い詰められる。死闘の末、転落しかけたデッカードを、寿命が尽きる最後の瞬間にロイが救い上げる。「すべての記憶も、やがて消える。雨の中の涙のように」という詩的な独白を残し、ロイは静かに息絶え、抱いていた白い鳩が空へ舞い上がる。生き延びたデッカードは自室に戻り、自らの個人的な夢を見透かすように置かれた監視者ガフの「折り紙のユニコーン」を発見する。自らもまた作られた存在である可能性に直面しながらも、彼はレイチェルと共に未知の未来へと逃亡する道を選ぶのだった。

『ブレードランナー 2049』 (2017年/舞台設定:2049年)

前作から30年後の2049年。タイレル社の倒産と、すべての電子データが消去された大停電(ブラックアウト)を経て、世界はさらなる環境崩壊の果てにあった。新たな創造主ニアンダー・ウォレスは、人間への絶対服従を遺伝子レベルで組み込んだ新型(ネクサス9型)を製造し、社会を支配している。ロサンゼルス市警のブレードランナー「K(ジョー)」もまた、旧型レプリカントを狩るよう作られたネクサス9型であった。感情を抑圧する「ベースライン・テスト」を定期的に受けさせられるKは、ウォレス社製のホログラムAI「ジョイ」だけを心の拠り所として孤独な日々を送っていた。

ある日、Kは旧型のサッパー・モートンを「解任」した農場の枯れ木の下から、女性の遺骨を発見する。それはかつてデッカードと逃亡したレイチェルのものであり、生殖能力を持たないはずのレプリカントが「胎内から子供を出産した」という、世界の秩序を根底から覆す奇跡の証拠であった。

警察からの「子供の抹殺」命令と、自らを神と称するウォレスが放った暗殺者ラヴからの追跡を受ける中、Kは捜査を進める。放射性砂塵に覆われたサンディエゴの孤児院跡で「6-10-21」という日付が刻まれた木彫りの馬を発見したKは、それが自らに植え付けられた記憶と一致することから、自分がその「奇跡の子供」であると信じ込むようになる。記憶の創造者である無菌室のアナ・ステリン博士が、その記憶を「本物だ」と涙ながらに肯定したことで、Kの実存的信念は決定的となる。

Kは放射能に汚染されたラスベガスで隠遁生活を送るデッカードを突き止めるが、強襲してきたラヴによってデッカードは拉致され、彼を愛し守ろうとしたジョイは携帯端末を踏み砕かれて完全に破壊されてしまう。絶望の底でレプリカント解放戦線に救出されたKは、真の奇跡の子がアナ・ステリン博士であり、自分の記憶は彼女から移植されたもので、自身はただの囮であったという残酷な真実を知る。

「選ばれし者」という幻想を失い、自分が何者でもないと悟ったKは、解放戦線の「デッカードを暗殺せよ」という命令にも背き、自らの純粋な意志でデッカードを救うことを決意する。巨大な防波堤(海の壁)での激しい死闘の末にラヴを倒したKは、デッカードを娘であるアナ・ステリンの元へと送り届ける。すべてを終え、雪が降り積もる研究所の階段に横たわったKは、作られた命でありながら自らの選択によって魂を獲得し、手のひらに落ちる雪の確かな冷たさを感じながら、静かに息を引き取るのだった。

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